水晶浜海水浴場から見える関西電力美浜原発=2025年8月22日、福井県美浜町、有田哲文撮影

連載コラム「日曜に想う」 記者・有田哲文

 丸山真男を論じるような知見はないが、このフレーズは頭のすみに残っている。「つぎつぎになりゆくいきほひ(勢い)」。戦後を代表する政治学者が、日本人の意識の底を探り、行き着いた概念だ。

 主体的に行動するのではなく、目の前に次々に現れる事態に付き従う。その時の勢いに身を任せるだけなので、理想や目標が入り込む余地はほとんどない。丸山は神話や史書をもとに、この国の思考や行動のあり方を批判的に描いた。

 そんなことを思い出したのは、原発をめぐる最近の議論に、変な「いきほひ」を感じるからだ。「人工知能(AI)のために原発が必要だ」。電力を大量に使うAIの時代だとして、原発を正当化する声が政界や経済界から出ている。東京電力福島第一原発で14年前に起きた事故など、とうに上書きしてしまったか。

 東の原発銀座が福島なら、西…

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