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結審後の記者会見で質問に答える原告弁護団長の小島延夫弁護士(中央)=2024年11月27日、福岡市
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 原発事故の賠償費用を、原発に無縁の新電力の利用者も負担する送電線使用料に上乗せするのは違法だ――。福岡市の新電力が国を相手にそう訴えた裁判の控訴審判決が2月26日、福岡高裁で言い渡される。控訴審では、一審敗訴の原告側に国の審議会委員などを歴任した大物経済学者が加勢。国側を批判する異例の展開となった。

 問題になっているのは、どの電力会社と契約しても必ず電気料金に含まれる託送料金(送電線使用料)に、東京電力福島第一原発事故の賠償費用の一部を上乗せするようにした経済産業省の省令改正だ。

 託送料金は、新電力を含むすべての電力会社(小売事業者)が送配電事業者に支払うことになっているもので、家庭向け電気料金の3~4割を占めるとされる。電力小売りが全面自由化された後も、国が定める規則に基づいて算定される。

 ここに原発事故の賠償費用を上乗せする方針は、経産省が2016年に打ち出した。東電が被災者に払う賠償費用を、原発と無縁の新電力までが一律に負担することになるとして、消費者団体などは激しく反発した。

 だが、経産省は「過去にはみんなが原発の安い電気の恩恵を受けてきた」などとして押し切った。実際には、賠償額が想定より膨らんだ分を電力利用者全体から広く薄く回収する形になっていた。17年に料金算定規則の省令を改正し、20年に上乗せの料金変更を認可した。

 原告の新電力「グリーンコープでんき」は20年10月、この認可の取り消しを求めて訴訟に踏み切った。九州など16府県に約43万人の組合員を抱える生協「グリーンコープ」が原発事故後に設立した会社で、脱原発に向けて太陽光などの発電や電力小売りに取り組んでいた。

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り(FIT)制度のように、特定の電源のための費用が電気料金で回収される例はあるが、個別の法律で定められ、金額も毎月の明細に明示される。組合員の討議では「福島の復興のためにお金を払うのはよい」との声も出たが、「国会の議決を経ずに経産省だけで決められる省令改正で、原発のための費用負担をわかりにくい形で決めたのはおかしい」「これは民主主義の問題だ」という意見でまとまった。

 原告側は裁判で、電気事業法が託送料金の基準を「適正な原価」と定めていることなどに着目。「賠償は送配電事業に必要な費用ではなく、託送料金に含めたのは電気事業法の規定に反する」などと主張した。

 一方、国側は「『適正な原価』に何が含まれるかは経産相の専門的・技術的裁量に委ねられている」「広く公平に負担すべき公益的課題に要する費用を託送料金を通して回収することは、託送料金の制度が導入された1999年から想定されていた」などと主張した。

 23年3月の福岡地裁判決はこの国の主張をなぞる形で原告の請求を棄却。「賠償は公益的課題に要する費用であるといえ、託送料金に含めるのは経産相の裁量の範囲内」と結論づけた。

 控訴審で原告側が反論の的にしたのが、国側の「公益的課題に要する費用を託送料金を通して回収することは、99年当初から想定されていた」という主張だ。弁護団長の小島延夫弁護士がある会合で偶然同席した経済学界の重鎮、八田達夫・大阪大名誉教授(公共経済学)から協力を得られたのがきっかけだった。

 八田さんは、公平な競争で料…

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