広域避難計画に、複合災害対策がなくて良いのか――。そんな請願が、東海第二原発が立地する茨城県東海村の議会に出されている。10日、原子力問題調査特別委員会が開かれ、請願の審査が始まった。同議会では原発再稼働を求める請願の審査に2年半ほどかかっており、請願を採択するかの判断は年単位の時間がかかる可能性がある。
村は昨年12月、原発の重大事故に備えた広域避難計画を策定。ただ、原発事故と自然災害が一緒に起こることを想定したものではなく、複合災害に備える必要性や屋内退避の妥当性についての指摘が村内外で相次いでいた。
この日の特別委は、請願を出した2人の男性が趣旨を説明し、議員からの質問を受ける形で進んだ。男性(79)は「地震による原発事故の対策がない計画は実効性を欠き、信頼性を失っている。地震や津波との複合災害対策の追加を求める」と述べた。
原発再稼働を推進する立場の議員は「市町村単独の計画では確かに実効性を欠いている」としつつ、「国や県などとの緊急時対応のとりまとめの際に議論になるので、(計画に言及がなくても)そういうたてつけになっている」として計画に盛り込む必要はないと指摘した。
これに対して請願者の男性は「住民としては不安。国や県と議論するためにも複合災害対策について村の考えを示す必要がある」と応えた。
今後、特別委では東日本大震災で道路にどの程度の被害があったかなどを調べながら審査を続ける。
内閣府や原子力規制委員会によると、重大事故に備えた広域避難計画は、災害対策基本法に基づいて周辺自治体がつくることになっている。同法は災害全般について定めたもの。自治体のつくる計画は規制委の審査対象ではなく、再稼働に必要な要件として明記した法律はない。
原発事故については規制委が定める「原子力災害対策指針」があり、5キロ圏は放射性物質の拡散前に避難することや、5~30キロ圏は屋内退避して状況に応じて避難することを定めている。市町村はこの指針も参考にして計画を定めている。(張守男)