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参政党の神谷宗幣代表がJR盛岡駅前で行った応援演説で、「人間にファーストもセカンドもない」と掲げて抗議する人たち=2025年7月8日、盛岡市、伊藤恵里奈撮影

 「盛岡でも外国人が非常に増えていると思いませんか。ある程度、規制を設けないとこの先、怖くないですか」

 8日、参政党の神谷宗幣代表が応援演説に駆けつけたJR盛岡駅前。同党新顔の及川泰輔氏(46)が約300人の聴衆に向かい、税金や社会保険料の低減などとともに「外国人問題」を訴えると、聴衆から拍手も起きた。

 集まった人々は老若男女さまざま。雫石町の60代女性は「外国人は優遇されている」と憤り、5月に神谷氏の動画を見て同党支持になったという盛岡市の70代女性は「このままだと日本が乗っ取られる」と真顔で話した。滝沢市の70代男性は「コロナワクチンを4回打った後に参政党のユーチューブを見て、打ったことを後悔した」と言う。

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参政党の神谷宗幣代表(左)と及川泰輔氏(中央)=2025年7月8日午後2時25分、JR盛岡駅前、三浦英之撮影

 昨年10月の参院岩手選挙区補選で、参政党公認候補は4万8214票(得票率約9%)の惨敗。今回、及川氏は10万6806票(同約19%)を得た。朝日新聞の出口調査では、20代からの支持が4氏で最も高い4割超あるなど若者からの支持が厚かった。

 参政が掲げた「日本人ファースト」が、社会の分断を招く危険性も表面化した。

 及川氏は8日の演説で、前日に高校生たちの「盛岡さんさ踊り」の練習風景を見たとして、「子供が減って外国人を受け入れて、盛岡さんさはどうなるのか。イエーイ、イエーイなんてなるのか。嫌でしょ」と発言。「なんでこんなにコンビニ、居酒屋で働いている人、外国人が増えているのか」とも述べた。

 こうした言動に対し、聴衆からは疑問も出た。「人間にファーストもセカンドもない」「差別を選挙に利用するな」というプラカードを掲げていた盛岡市の母娘は「こんな差別論者がまかり通るなんてありえない」。

 国内の在留外国人は昨年末で376万人。第2次安倍政権が労働者の受け入れにかじを切って以来増えている。人口に占める割合は3%で、在留外国人の犯罪率はここ十数年間横ばい。県内でも農業や製造業の現場、コンビニで働く外国人らが、日々の暮らしを支えている。

 落選が決まった20日夜。及川氏は記者団に一連の言動を問われ、「野放図に受け入れ続けるのはちょっと。治安というか日本の方々との衝突を避けるためにも、制限を設けるべきだということは変わっていない」と改めて言及。さんさ踊りに関する発言には「ちょっと大げさに表現してしまったなというところもありました」と釈明した。

 神谷宗幣代表は3日の第一声で少子化対策をめぐり、「今まで間違えたんですよ。男女共同参画とか」「高齢の女性は子供が産めない」と発言。SNS上で「女性蔑視だ」などと批判が相次ぎ、県内でも抗議の声を上げる人たちがいた。

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「女の価値を産む産まないで決めるな」などと書かれたプラカードを掲げて町で抗議活動をする女性たち

 「女の価値を産む産まないで決めるな」「#差別に投票しない」

 12日、盛岡市に有志11人が集まり、メッセージを掲げ繁華街に立った。同様の抗議活動が11~13日に全国100カ所以上で行われ、花巻市でも16日に有志が街頭で抗議した。

 盛岡市での抗議活動を呼びかけた20代会社員女性は「県内でも差別に反対する思いをともにして、行動に移せたことは意義深い」。参政党の躍進には「差別的な発言があっても勢いのある政党に『希望を感じる』という人が特に若者が多かった。政治についてより多くの人とともに考える場を持ちたい」と語った。

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早々に落選見込みとなった及川泰輔氏(右)=20日午後8時8分、盛岡市、三浦英之撮影

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