鳥取市役所に設けられた期日前投票所=2025年7月4日、富田祥広撮影

【社説PLUS】社説を読む、社説がわかる

 参院選は20日、投開票日を迎えます。

 まだ投票に行っていない人も。期日前投票を済ませた人も。投票に行くつもりがない人も。若い読者のみなさんに向けた「社説」を、改めてお届けします。

毎日のテーマに何を選び、どう主張し、誰にあてて訴えるのか。論説委員室では平日は毎日、およそ30人で討議し、総意として社説を仕上げています。記事の後半で、この社説ができるまでの議論の過程などをお届けします。

【7月11日(金)社説】

 SNSに選挙の投稿がぐっと増えましたね。この社説は、今回はじめて投票するあなたに向けて書いています。読み終わるまでの時間を確認すると、3分半ほどでした。少しの間お付き合いいただければ、うれしいです。

 生徒会長を投票で選んだことはありますか。「勉強や部活を頑張っているあの人なら」「公約通りになれば楽しくなりそう」――。そんな思いで一票を投じた経験があれば、大丈夫。国政選挙も似ているところがあります。

 今回の選挙は、多様な人々が暮らす社会を少しでもよくするため、私たちの意見を反映させる「代表者」を決めるものです。当選議員は公約を果たそうと、国民からどう税金を集め、いかに使うかを決める役割を与えられます。

あなただけじゃない

 物価高や年金、外国人政策など、各候補の主張がぶつかり合っています。みなさんの関心からは遠いテーマもあるかもしれません。だれに投票すればいいのかわからない、と悩む人もいるでしょう。実は、私たちも同じです。

 ではどうすれば。まず各党のサイトを見比べてみませんか。街頭演説に足を運ぶのもいいでしょう。「ボートマッチ」という、問題に答えると自分の考えに近い候補がわかるサイトも参考になります。

気を付けてほしいのは

 お願いがあります。SNSのショート動画で、気になる候補や政党が見つかったかもしれません。でも、それだけで投票先を決めないでほしいのです。情報源をSNSだけに頼ると、あなたの検索結果から予測された「あなたが見たい情報」に偏っている可能性があります。直感は大切にしつつも、別の判断材料にふれてみて、直感が確信へ近づくか点検してみてください。

昨年の衆院選に合わせて開かれた啓発イベントでは、ポスター掲示板をイメージした顔はめパネルもあった=2024年10月26日、名古屋市中区、松島研人撮影

 近年、低い投票率が問題です。気になるのが10~30代の水準が全体の平均より低い点です。ならばより上の世代に響く公約を、と候補者らが考えたら、将来を見据えた議論はしぼみます。複雑で難解な問題を、みずみずしい感性を持つみなさんと一緒に考えたい。どうせ自分の一票で国や社会は変わらない。そんな思いは丸めてぽいっと放っていいと思います。政治家を育むのは、私たちですから。

 20日の投開票日が迫っても投票先が決められないかもしれないあなたへ。焦る必要はありません。この人の方がまし、との投票も価値があります。いまの社会が抱える問題と将来に目を向け、だれかを選ぶ営みは、民主主義の源です。あなたが投票しなければ、消えてしまう光でもあるのです。

 最後まで読んでくれて、どうもありがとう。

参院選(選挙区)の投票率の推移

この社説ができるまで 論説副主幹・伊藤裕香子

 社説って、なんだか硬いし、難しいから。

 そんな感想を言われることがよくあります。特に紙の新聞を手に取る機会の少ない若い世代には、だいぶ遠い存在かもしれません。

 けれど、未来をつくる世代にこそ届けたいテーマはたくさんあります。論説メンバーは毎日の討議とは別に、よく「ああでもない、こうでもない」と悩みながら社説のテーマを探して話をします。そのとき一人の論説委員がぽつりとこぼした言葉が、この社説のはじまりとなりました。

 「素直に投票を呼びかけるも…

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