三田村さんは玄関の電話機でやり取りした=2024年8月1日、愛知県東海市の自宅、伊藤智章撮影

 7月下旬、愛知県東海市の作家三田村博史さん(88)の自宅で、記者(63)が取材していたときのことだ。電話がなかなか終わらない。しかも声が緊迫している。実はクレジットカードが不正利用されかけ、何とか犯人を押さえたらしい、というのだ。そんな。思わず身を乗り出した。取材の終わりごろにもまた電話があった。ところが翌日、全く違う事実を告げられた……。

 三田村さんは元高校教諭。竹下恵子さん主演の演劇「まるは食堂」の原作者として知られ、いまも車で取材に出かける。

 7月27日午後1時、戦争体験を聴くため自宅を訪ねたら、玄関の固定電話で話し込んでいた。10分ほど待たされて語り始めたのは、愛知県警の「南署」からの電話という。

 〈名古屋市内の大型店で、7万円の時計を購入するため、三田村さんの妻名義のクレジットカードが不正利用されようとしている〉

 〈女性店員が機転を利かして引き留め、逃げようとしたが、犯人の身柄は押さえた……〉

 さらに電話するよう指示された「クレジットサービス協会」で話を聴いた。どうやら以前のカード利用時にデータを不正に複写されたらしい。ほかにも2回計40万円が使われていた。ただ8月15日が引き落としなので、まだ間に合う、とのこと。

 記者の来訪で電話は中断したが、三田村さんは「よく店員が気づいてくれた」とほっとした様子だった。自身が6月ごろ、カードや名刺が入った鞄を紛失していたこともあいまって「関係があるのかな」と首をひねっていた。それでも犯罪が防がれたのなら、と記者も胸をなで下ろした。

相手ペースで進む電話 「念のため」でウソ判明

 午後4時ごろに再度電話がかかってきた。「通帳」「カード」と高い声が響く。事後処理が大変なのだろう。記者は遠慮して辞去した。

 ところが、24時間後。三田…

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