埼玉県所沢市にある角川武蔵野ミュージアムの「本棚劇場」。まだ読めていない「名作」の数々が胸をよぎる=2022年

 「耕論 『教養』はどこへ」(4月5日付朝刊)の企画を立てた2月初め、20年以上前に出た中公新書「教養主義の没落」(竹内洋著)がにわかに注目を浴びた。

 ミュージシャンの米津玄師さんが「べらぼうに面白かった」とウェブメディアのインタビューで語り、書評家の三宅香帆さんも「超絶参考文献」と推奨したことも手伝ってSNSで拡散された。中央公論新社によると、2月下旬から3月半ばの間に3回、計3万部の増刷を重ねた。累計9万4500部のうち3分の1近くに及ぶ。

 没落したはずの教養主義や教養が人を引きつけてやまないのは、なぜか。

 その前に世の中で何が「教養」とされてきたのかを探ろう。国立国会図書館サーチで「教養としての○○」という題名の本は478件該当する。最古の例は1936年刊。意外に古いうたい文句なのだ。80年代辺りまで○○は「論理学」「倫理学」といった学問名が大半だ。大学の課程と同じく、専門に対する教養と考えるとしっくり来る。

 その後は分野が多様化する…

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