世界遺産・上賀茂神社(京都市北区)が、所蔵する国重要文化財の古文書に記された花押(かおう)(サイン)をテーマにした史料集をつくった。中世から近世に神社に奉仕した人たちの1万4千点超もの花押だけを収めた。古社の長い歴史も浮かぶ一冊に仕上がった。
花押は名前を図案化したものだ。源頼朝や織田信長らも使った。現代も閣議に用いられてきた。
神社では約1万4千点の古文書群が2006年に重文になった。高井俊光宮司は「いまの日本を知る上で大変貴重な史料」。14年に史料編纂(へんさん)会を発足し、古文書群を調べて史料集として出版する事業を続けている。
今回の史料集は、古文書群のうち「氏人置文(うじびとおきぶみ)」と呼ばれる文書に記された花押を収めたものだ。この文書は神事・祭礼や生活規範に関する取り決めなどについて随時作られ、多くの花押が記されている。時代ごとの神職集団(氏人)が、文書の内容を承認する意味で記したとみられる。
室町時代中期から江戸時代前期までの文書にすえられた膨大で多彩な花押が載っている。史料編纂(へんさん)に携わった金子拓・東京大史料編纂所教授は「歴史に名前が残るわけでもない人たちの花押を一冊に収めていることは意義があり、これだけの花押を収めた日本史の史料集はなかったと思います」と話す。
A5判608ページ。別冊つきで税込み6千円。問い合わせは神社(075・781・0011)。