三鷹市で暮らした作家・太宰治の短編小説「雀」の自筆原稿の全文が6月6日から、市美術ギャラリーで初公開される。原稿は昨年、都内の古書店で見つかり、市が880万円で購入していた。太宰が推敲(すいこう)した跡が残る、欠損ページのない完成稿で資料としての価値も高いという。
伝わる、戦後の重苦しい気持ち
雀は、太宰が三鷹から故郷の青森に疎開していた1946年に執筆され、同年10月発行の「思潮」に掲載された。太宰とおぼしき主人公が戦後、再会した友人から聞かされた体験談が柱になっている。学芸員の吉永麻美さんは「戦後の日本社会と、太宰の重苦しい気持ちが伝わる」と話す。太宰の戦争への批判的な思いが感じられる作品だという。
自筆原稿は200字詰めの原稿用紙38枚にインクで書かれている。ひもでとじられていたため、修復作業して、全ページを見られるようにした。太宰の原稿の9割は、妻の津島美知子さんから寄贈された日本近代文学館が所蔵していて、古書店から見つかるのはまれという。
太宰の生誕日を記念した「桜…