震度6強を観測した台湾東部・花蓮県の被害=SNSから
3日午前7時58分(日本時間同午前8時58分)ごろ、台湾東部沖を震源とする強い地震が起きた。台湾当局によると、東部の花蓮県では震度6強を観測。落石などで9人が死亡し、けが人は同県や台北市、隣接の新北市などの広い範囲で1011人に上った。同日午後10時現在で143人が崩れた建物などに閉じ込められている。
日本の気象庁によると、地震の規模を示すマグニチュードは7・7と推定される。中部・台中市で高層ビルが倒壊するなどして死者2400人超、負傷者1万人超が出た1999年9月21日の地震以来の規模となった。
建物被害の特に大きかった東部の花蓮県花蓮市では、ビル4棟で下層部が崩れて大きく傾いた。県内では山崩れのような映像も伝えられている。多くのけが人が出ているほか、閉じ込められた人たちの救助作業が続いている。
消防当局などによると、花蓮県の著名な景勝地・太魯閣(タロコ)渓谷では登山客3人が死亡した。同県の海沿いの主要道路では走行中のトラックや駐車場の車への落石で死傷者が出た。
台湾新幹線は一時、全線で運行を取りやめた。花蓮県の鉄道や主要道路では、落石や橋の崩落などで交通がまひしている。4日からの先祖を供養する「清明節」の連休で移動する人々の足にも影響しそうだ。
日本政府によると邦人の被害情報は入っていない。岸田文雄首相は台湾を支援する意向を示した。
気象庁によると、国内では沖縄県与那国町で最大震度4を観測するなどし、同県宮古島・八重山地方で3日午前、最大0・3メートルの津波を観測した。同庁は「今後2~3日程度は規模の大きな地震が発生することがある」と注意を呼びかけている。(高田正幸=花蓮市、畑宗太郎=北京、力丸祥子)
台湾 過去にも大きな地震災害
台湾はユーラシアプレートの縁(へり)に位置し、これまでにも大きな地震が多発してきた。
1999年9月21日に中部・台中市などを襲ったM7.7の地震では、都市部で多くの高層ビルが倒壊。台北に至るまで被害は広範囲に及び、死者2413人、負傷者は1万人超に上った。台湾では「921地震」として知られ、防災体制を整える契機になった。
2016年2月には、M6.4の地震で台南市の16階建てのマンションが横倒しになり、115人が死亡。建設会社の元社長らが業務上過失致死罪で立件されるなど、建物の強度不足が社会問題になった。
今回、地震の起きた東部・花蓮県の付近でも、近年、大きな地震が相次いでいた。
18年2月に発生した花蓮沿岸を震源とするM6.4の地震では、倒壊したビルの下敷きになるなどして、17人が死亡した。
2年前の22年9月には、隣の台東県で最大震度6強を記録する地震が2度発生。花蓮県でも橋が落下したり、ビルが倒壊したりした。先住民族や高齢者の多い集落が多く、被害が大きくなった。(小早川遥平)
被害の大きい場所(名称は現在) マグニチュード 死者数
1906年3月 中部(嘉義市など) 6.8 1258人
1935年4月 中部(台中市など) 7.1 3276人
1941年12月 中部(嘉義市など) 7.0 357人
1964年1月 南部(台南市など) 7.0 107人
1999年9月 中部(台中市など) 7.7 2413人
2016年2月 南部(高雄市など) 6.4 117人
2018年2月 東部(花蓮県など) 6.4 17人