住民説明会では、住民からの質問や意見が相次いだ=2025年4月24日午後7時18分、広島県呉市警固屋2丁目、柳川迅撮影

 日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区(日鉄呉)跡地に「多機能な複合防衛拠点」を整備する防衛省案について、広島県呉市が24日夜、初めての住民説明会を開いた。住民からは地域の活性化につながると歓迎する声が上がる一方、有事に攻撃対象になると懸念する意見も出た。

 説明会は跡地に近い警固屋まちづくりセンターであり、住民205人が参加した。防衛省中国四国防衛局の有賀元宏企画部長、同省東日本協力課の北原由尚企画調整官、呉市の大森和雄総務部長らが出席した。

 防衛省の有賀部長は資料を示しながら、火薬庫や水中・水上で使用する無人機の製造整備拠点を設けることなど、跡地への機能の配置を示したゾーニング案を説明した。有賀部長は「防衛力の抜本的強化のためには、装備品の維持整備、製造、訓練、補給等を一体的に機能させ、部隊運用の持続性を高める必要がある」と防衛拠点整備の必要性を述べた。

 住民からは「地域の活性化、経済的な波及効果につながると思う」と期待する意見が出た。

 一方で、「台湾有事のようなことがあった場合どうなるのか」との質問も出た。これに対し、防衛省の北原調整官は「台湾有事といった仮定の質問には答えられない。日米防衛協力を深化させて、我が国への武力攻撃が発生しないよう抑止力を高めたい」と答えた。

 火薬庫の用途を問う質問には、「部隊の活動の拠点として火薬庫は必要。具体的にどの弾薬をどう保管するかは自衛隊の能力を明らかにすることになるので、明らかにできない」と答えた。

 配置される隊員数や事業費、今後のスケジュールなどの質問が出たが、防衛省から具体的な回答はなかった。質問のため挙手する住民が多数いた。当てられないままの人も多かったが、市は今後の住民説明会は予定していない。

 終了後、参加した住民の伊藤道子さん(80)は「本当はもっと言いたかったのに質問ができなかった。引き続きもっと説明会を開いて欲しい」と話した。警固屋商店連合会の宮本幹三会長(61)は地域の活性化に期待する一方で、「ヘリポートができたらやっぱり音の部分が心配。これからの説明会で説明してくれると思う」と語った。

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