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 第107回全国高校野球選手権大会は5日午後4時、大会史上初の夕方開催となる開会式が始まった。その後に行われる創成館(長崎)―小松大谷(石川)の開幕試合も、大会史上初めて午後5時30分開始のナイターで実施される。110年前に始まり、長い歴史を持つこの大会。開幕試合も様々なドラマに彩られている。

  • 開会式は夕方、全試合でおにぎり きょう開幕の甲子園、こう変わる
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1915年8月18日、第1回大会の開幕試合で始球式をする朝日新聞社の村山龍平社長。左端に立つのは鳥取中(現・鳥取西)の鹿田一郎投手

 1915年8月18日、大阪・豊中グラウンドで始まった第1回大会で、開幕試合を制したのは鳥取中(現・鳥取西)だった。村山龍平・朝日新聞社社長(当時)による始球式の後、広島中(現・国泰寺)と対戦し、2時間30分の熱戦の末に14―7で勝利した。

 鳥取中は第2回(16年)と、鳥取一中として出た第12回(26年)、第15回(29年)、鳥取西として出た第40回(58年)にも開幕試合に臨んだ。16年は敗れたが、26年、29年、58年は勝ち、開幕に強い伝統を発揮した。

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第46回大会の開幕試合の延長十七回表、八代東は1死三塁からスクイズを試みるが捕飛となり、得点ならず

 大会史上、とりわけ大熱戦になった開幕試合が、第46回(64年)の八代東(熊本)―掛川西(静岡)。八代東の池田純一、掛川西の山崎道夫の両投手が互いに譲らず、延長十八回の末、0―0で引き分けた。

 翌日の再試合は掛川西が6―2で勝ち、計27イニングにわたる激闘に終止符を打った。延長十八回引き分け再試合は当時、第40回(58年)準々決勝の徳島商―魚津(富山)以来2度目で、しかも開幕試合だったため、大きな話題になった。

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第76回大会の開幕試合で二回に先制する佐賀商。この試合の勝利で勢いに乗り、初優勝へ駆け上がった

 開幕試合の勝利校が優勝へ駆け上がるケースは戦前から何度もあるが、第76回(94年)の佐賀商と第89回(2007年)の佐賀北の快進撃は今も語り継がれている。

 94年の佐賀商は浜松工(静岡)との開幕試合で勝つと、樟南(鹿児島)との決勝は同点の九回、西原正勝主将の満塁本塁打で試合を決め、佐賀勢として初優勝した。

 その13年後、佐賀北の優勝への歩みは不思議なほど佐賀商と重なる。福井商との開幕試合を制すると、広陵(広島)との決勝は八回、副島浩史選手が逆転の満塁本塁打を放ち、佐賀勢として2度目の優勝を決めた。地域の公立校が強敵を何度も破った優勝は、佐賀の言葉をとって「がばい旋風」と呼ばれた。

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第89回大会の開幕試合で、大会第1号本塁打を放つ佐賀北の副島浩史選手

 天候にも左右されてきた。第39回(57年)の坂出商(香川)―山形南は坂出商が一回に4点を先取したが、二回裏開始前に雨が激しくなり、ノーゲームとなった。翌日の試合も坂出商が優位に進め、4―0で勝った。第96回(14年)は台風の影響で大会史上初めて開幕が2日延期され、ようやく実施された開幕試合では、春日部共栄(埼玉)がその年の選抜王者の龍谷大平安(京都)を破った。温暖化の影響か、近年は天候の影響を受けることが重なり、第99回(17年)、第103回(21年)も台風で開幕が延期されている。

 開会式で選手宣誓を務め、直後の開幕試合に出場した主将は、戦後最初の第28回(46年)、京都二中(現・鳥羽)の田丸道夫主将らのケースがある。田丸主将は成田中(現成田=千葉)との開幕試合で完封し、1―0での勝利の立役者になった。

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第101回大会の開会式で選手宣誓をする誉の林山侑樹主将。直後の開幕試合にも5番捕手で出場した

 近年では第101回(19年)、誉(愛知)の林山侑樹主将が大役を務めた。「夏の甲子園も多くの困難を乗り越え、偉大な先輩たちがつないでくれたおかげで、101回目という新しいスタートを切ることができた」と選手宣誓した林山主将は、八戸学院光星(青森)との開幕試合に5番捕手で先発出場。試合には敗れたが、はつらつとプレーした。

 戦争やコロナ禍などによる大会中止があり、開幕試合は今年が104回目。大会に新しい1ページを刻む熱戦はもうすぐ始まる。

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開会式前、観客でにぎわう阪神甲子園球場前=内海日和撮影

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