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日本総研主任研究員の高坂晶子さん

 旅館やホテルに泊まったとき、宿泊代とは別に、1泊あたり100円や200円などを払うことがあります。「宿泊税」です。北海道から沖縄まで、全国各地の自治体で導入に向けた検討や議論が進み、ブームさながらに広がる可能性もありそうです。観光政策にくわしい日本総研の高坂晶子さんに聞きました。「取りやすい人から取る税」にはならないのでしょうか?

予算が確保できなくなっている実態

 米ハワイをはじめ、欧米では宿泊税は珍しくありません。国内では2002年に東京都が始め、大阪府や北海道倶知安(くっちゃん)町など有名観光地で17年以降に導入が進みました。コロナ禍で議論は一時中断しましたが、今年9月末現在で13自治体が制度化、50ほどの自治体が検討中と動きが活発になっています。

 自治体の独自財源として導入したいという動きが広がる背景には、観光客の受け入れ態勢を整えるための予算を、自治体が十分に確保できなくなっている実態があります。

 少子高齢化が進み、自治体予算では社会保障費が相当の割合を占め、年々伸びています。一方、外国人を含めて地方に足を運ぶ人は増えても、国からの地方交付税交付金は変わりません。交付額は、その自治体の人口などを基に行政サービスに必要な財政需要を計算して決まりますが、そこには一時的に訪れるだけの「交流人口」は含まれないからです。

 「宿泊税を取ると客が減るのでは」とタブー視してきた旅館やホテルの業界に最近、賛同の意見が見られるのは、こうした自治体の厳しい懐事情への理解が進み、むしろ宿泊税を活用して観光振興を図るほうが「得策」と考えを変えつつあるからだと思います。

 しかし、強制的に徴収できる…

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