今年、生誕100年を迎える吉本隆明(1924~2012)。思想家としての彼については多くの言葉が費やされてきたが、詩人としての側面に改めて光が当たっている。3月に「わたしの本はすぐに終る 吉本隆明詩集」(講談社文芸文庫)、7月に「吉本隆明詩集」(岩波文庫)と、立て続けに新たな選詩集が刊行され、岩波文庫の詩集はすぐに重版になったという。
吉本は詩人として世に出た。その後、評論活動に重心を移し、多作だった詩の量は減った。それでも吉本は、詩人としての自意識は持ち続けた。晩年には、「(萩原)朔太郎にならって詩第一という原則をとってきた」(「吉本隆明全詩集」あとがき)とつづっている。
文芸評論家の三浦雅士さんは、「詩人としての吉本隆明のほうが、思想家としての吉本よりも重要だと思う」と語る。
特に50年代前半までの初期…