公立中学校で給食の実施が遅れていた「中学給食後進県」の神奈川県。なかでも横浜市は、給食がない段階から、デリバリー弁当「ハマ弁」の提供、さらにデリバリー方式の選択制給食へと変化を遂げてきた、その象徴的存在だ。
今回、朝日新聞が実施した調査では、公立中学校で主食とおかず、牛乳がある「完全給食」を実施しているのは、神奈川県内33市町村のうち28市町村にのぼった(今年6月時点)。ただし、横浜などの5市と、相模原市の一部は、生徒が利用するかどうかを選ぶ「選択制」だった。
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選択制は2010年の相模原市、14年の藤沢市、17年の鎌倉市と座間市、20年の伊勢原市、21年の横浜市など、ここ10年あまりで導入されてきた。
その理由は「家庭の弁当を持参したいという保護者や子どものニーズが高い」(藤沢市)、「体格差に応じて分量を調整できる家庭弁当を望む声がある」(鎌倉市)、「アレルギー等で弁当が必要な生徒がいる」(伊勢原市)――といったものだ。
その際、セットで選ばれてきたのが「デリバリー方式」だった。
栄養バランスやカロリーに配慮して自治体の栄養士が献立をつくり、民間業者が調理して各校に弁当箱で届ける。
学校に給食室をつくったり、給食センターをつくる敷地を確保したりする必要がなく早期に導入できるうえ、配膳が必要ないので時間割を変更しなくてもいいといったメリットがあるとされる。
現在、選択制の横浜市では、山中竹春市長が市長選の公約に「中学校給食の全員実施」を掲げていたこともあり、26年度からの全員実施に向けて準備が進んでいる。
全員制でも「デリバリー方式」の理由は
その全員制でも「デリバリー方式」が採用された。
自校の給食室で調理する「自校方式」や近隣小学校で調理した給食を運ぶ「親子方式」、給食センターから学校へ配送する「センター方式」と比べ、早期に全員実施が可能だと試算されたからだ。
とはいえ、現在の設備ではすべての生徒と教職員分の1日8万食余りを供給することはできない。そこで市は金沢区の市有地に給食工場を新設するなどして、1日あたり2万8千食を提供する事業者をはじめ、6社を新たに公募。全員に供給できる態勢を整える計画だ。
また、デリバリー方式では衛生管理のため、おかずを一度冷ましてから配送することになる。横浜市ではいま、この「冷たい」という弱点の克服にも取り組んでいる。
現在は1人分ずつカップに取り分けた状態で保温剤とともに学校に届けているカレーやとん汁などの汁物を、食缶で学校に配送するという。教室で配膳することで温かく提供できるようになり、「いまよりたくさんの具材を汁物に使い、具材を大きく切って一緒に煮込むことでおいしさが増す」(市教委の担当者)。
今年度、モデル校で提供したところ、「食べ応えがあった」「おかわりができた」などと好評だったという。(小林直子、足立朋子)
同じ「選択制」、保護者負担も同額なのに
一方、神奈川県鎌倉市と藤沢市の公立中学校の給食は、どちらも利用するかどうかを選べる「選択制」で、民間業者がランチボックスに盛りつけて届ける「デリバリー方式」。保護者負担も1食330円(牛乳込み)で同額だ。
にもかかわらず、鎌倉市は昨年度の利用率が81.0%に達しているのに対し、藤沢市は29.6%にとどまっている。いったい何が違うのか――。
真っ先に思い浮かぶのは「お…