一力遼挑戦者=2024年10月11日午後2時47分、大阪府守口市のホテル アゴーラ大阪守口、北野新太撮影

 盤上でも盤外でも、発するオーラは常にやわらかだった。第49期囲碁名人戦七番勝負に登場した挑戦者、一力遼棋聖(27)は、それまでの一力ではなかった。課題のメンタル強化と、19年ぶりに日本に世界タイトルをもたらした自信が共振し、名実ともに天下人になった。

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 20歳のころに技量はすでに超一流の域に達していた。しかし大一番に弱かった。

 早稲田大学2年の2017年から18年にかけて、七冠独占の絶頂にあった井山裕太三冠に王座、天元、棋聖の3棋戦で立て続けに挑戦し、一つも勝てず10連敗した。

 手も足も出なかったわけではない。「実力的に井山さんからタイトルを奪取しても不思議ではなかった」。今期名人戦でタイトルを明け渡した芝野虎丸名人は言う。なぜ勝てなかったのか。

たどり着いた「爾今」の境地

 勝ちたい、勝たなければなら…

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