名古屋市中区栄4丁目のホテル客室で6月、男性(当時32)の遺体が見つかった事件で、恐喝の罪に問われた無職、波多野佑哉被告(23)=愛知県春日井市=の初公判が9日、名古屋地裁であり、波多野被告は起訴内容を認めた。検察側は「計画的で狡猾(こうかつ)な犯行だ」として、拘禁刑3年を求刑し、弁護側は執行猶予付きの判決を求め、即日結審した。判決は26日。
起訴状などによると、波多野被告は「美人局(つつもたせ)」による示談金名目で、男性から現金を脅し取ろうと考え、無職加藤伶音(れおん)被告(20)=強盗致死罪で起訴=と、当時19歳の女=恐喝の非行内容で保護観察処分=と恐喝をしようと共謀。加藤被告は6月7日未明、中区のホテル客室で「俺の妹に何してんだ」などと男性に因縁をつけ、首を絞めて窒息死させ、現金約4万2千円などが入ったバッグを奪ったが、波多野被告は恐喝の犯意にとどまったとされる。
検察側は冒頭陳述で、美人局の計画に至る経緯を明らかにした。加藤被告は、特殊詐欺グループに知人を「受け子」として紹介したところ詐取金を持ち逃げされたといい、補償金として400万円以上の多額の現金を要求されていたという。金策の相談を受けた波多野被告は、加藤被告と美人局で恐喝することを計画し、知人の女を誘った。分け前は女が2万円、残りを両被告で折半する計画で、実際に2人はそれぞれ約1万1千円を手にしたという。
波多野被告は被告人質問で、加藤被告から「美人局の女性を紹介してほしい」と頼まれ、貸していた12万円を返済してもらいたくて協力したなどと主張した。
検察側は論告で「貸していた金を美人局で回収しようとしており、動機は自己中心的だ。女性の共犯者を確保し、自らの手を汚さずに分け前を得た」などと指摘した。一方、弁護側は、被告は従属的な立場だったと主張して執行猶予を付けるよう求めた。