江戸時代の名古屋城二之丸庭園にあった4畳半の御茶屋「余芳(よほう)」が再建された。名古屋市は周辺の庭の整備も進めており、2026年に開催されるアジア大会までの一般公開を目指している。
13日に報道向けに公開された。余芳は第10代尾張藩主の徳川斉朝によって設けられた。江戸時代に広大な庭園を回遊する際の休憩所や、藩主が家臣に飲食をふるまうなど多目的に使われていたとみられる。
特徴は室内にある障壁画でタンポポやレンゲソウといった春の花が描かれている。「余芳」の名の通り、春の香りを感じさせる作りから斉朝の好みがうかがえるという。
余芳は明治初期に尾張徳川家から民間に売却され、名古屋市東区の個人宅に移築された。1973年に市指定有形文化財となり、2011年に市に寄贈された後は解体され、名古屋城内で保管されていた。
市は22年3月に二之丸庭園の整備計画を策定。余芳の移築再建が計画され、23年9月から工事を進めていた。
再建に際して、発掘調査で当時の場所の特定。江戸末期から明治初期に撮影された写真や庭園を描いた絵図の情報をもとに、残っていた当時の部材も活用し、江戸時代の姿を忠実に復元した。
市の担当者は、「全国的にもここまで忠実に復元できた御茶屋は珍しい。周辺の庭の景観と一緒に楽しんでもらえるようにしたい」と話す。