名古屋城天守の木造復元をめぐる市民討論会で差別発言があった問題で、名古屋市の広沢一郎市長は8日、障害者団体らが参加する会議に出席し、謝罪した。公式の場で名古屋市長が障害者団体に謝罪するのは初めて。
会議は障害者に関する施策について審議する「市障害者施策推進協議会」。年に2度、定期的に行われている。この日は学識経験者や障害当事者の計18人が参加した。
会議の冒頭で、広沢市長は差別発言について「あってはならないことで、当事者はもとより多くの方の心を傷つけ、信頼を損なった。深くおわびを申し上げる」と陳謝した。
問題は2023年6月にあった市民討論会で起きた。参加者が天守でのエレベーター設置を訴えたところ、他の参加者から差別発言を浴び、参加していた河村たかし・前市長らは発言を制止しなかった。
市の検証委員会は24年9月、差別発言に適切な対応ができなかった背景や遠因として、河村氏の意向を気にしなければいけない「職員の苦悩や葛藤」があったと分析した。
市は今年5月、問題の経緯などをまとめた「総括」を公表。この日の会議では市担当者が総括に基づき、人権への配慮や、再発防止と今後の事業の進め方について説明した。
これを受け、参加者からは「障害のある人の意見を聞くというが、聞くだけで何も反映されていないのでは」「バリアフリーは、障害者の人権にとどまらず全ての人に関わる。いずれは高齢者になるし、病気や事故で障害が生じるかもしれないのだから」「来秋にはアジア・アジアパラ競技大会がある。多様性や共生という考えを推進していただきたい」といった意見が出た。
市は今後、障害者団体だけでなく高齢者団体など市民への説明を行い、理解を得た上で天守復元に向けて再スタートさせる考えだ。