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今年の椅子のモデル発表に合わせて、椅子を贈呈された兜森さん家族(左)=2024年4月20日、東神楽町役場

 「生まれてきてくれてありがとう」「君の居場所はここにあるからね」――。こんな思いをこめて、誕生した子どもに、世界に一つだけの木製の椅子を贈る「君の椅子プロジェクト」が始まって、19年目を迎えた。一つの生命の誕生を、地域で喜び合う社会を取り戻すべく、ゆっくりと進んできた。

 「君の椅子」は、プロジェクトに参加する自治体で子どもが生まれれば、その子に椅子を贈るという仕組みだ。新たな生命の誕生を地域全体で喜び、その子に居場所があることの象徴として椅子を贈る。

 毎年、違うデザイナーが考案し、デザインが変わる。今年のデザインは、丸い座面と背もたれに、どっしりした二本の脚がついている。

 4月下旬、今年のモデルの発表があり、3組の親子への贈呈式が東神楽町役場で開かれた。剣淵町の公務員、兜森太喜さん(26)と風花さん(26)の第1子として2月10日に生まれた依茉(えま)ちゃんは、父母に抱かれながら椅子を受け取った。

 風花さんは「依茉の誕生を喜んでいるのは私たちだけでなく、みんなに祝福されて歓迎されていることが実感できた。社会に受け入れられている。いろんな料理をつくろうと思うので、この椅子に座って、いっぱい食べて、大きくなってほしい」と話した。

写真・図版
今年の椅子のモデル発表に合わせて、椅子を贈呈された家族と関係者。プロジェクトを発案した磯田憲一さんも=2024年4月20日午後2時30分、東神楽町役場

 プロジェクトは、東京電力福島第一原発事故で全村避難を強いられた福島県葛尾村が2018年に加わり、道外にも広がっている。

 葛尾村のほか、18年の胆振東部地震で37人の命が失われた厚真町も、被災により参加を決めた。生命のかけがえのなさを知り、一つ一つの新たな生命を大切にすることが町の復興につながると、19年から参加している。

 未曽有の大震災時には、君の…

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