中国外務省で長く日本語通訳を務めた周斌(チョウピン)さんが3日、中国・上海市の病院で死去した。90歳だった。日中国交正常化を推し進めた周恩来首相の信頼が厚く、1972年の正常化交渉では一部始終に立ち会った。
- 死の直前、周恩来は日中関係の未来へ遺言を 通訳が初めて明かす秘話
江蘇省生まれ。北京大を卒業後、中国外務省で20年超にわたり日中外交の最前線で通訳を担当した。周恩来氏のほか、鄧小平氏、胡耀邦総書記、華国鋒首相ら歴代幹部の通訳を務め、日中国交正常化交渉の舞台裏などを明かした回顧録を執筆。2015年には日本語版「私は中国の指導者の通訳だった――中日外交 最後の証言」を出版した。
日中外相にはさまれ
正常化交渉では、訪中した田中角栄首相や大平正芳外相らと周恩来氏らの会談に立ち会った。歴史認識をめぐり交渉が一時停滞した際には、打開のきっかけとなる大平外相と中国の外相による「車中会談」で、両者に挟まれて通訳するなど交渉を下支えした。
中国外務省を離れた後は記者に転じ、不動産業などにも携わった。定年後を過ごした上海市で同市日本学会顧問を務めるなど晩年も日中交流に関わった。