「永遠」の輝きで人々を魅了するダイヤモンド。その特性は、工業製品にも生かされてきた。佐賀県のベンチャー企業の大曲新矢さん(39)は、ダイヤモンドを使ったセンサーと人工知能(AI)の分析で「味」を可視化する「AIソムリエ」を開発した。出発点は、時代遅れとも言える古い技術の研究。いくつもの発想の転換が、ビジネスの種を芽吹かせた。
Changin’(10)
2025年は巳年。脱皮を繰り返し成長する蛇のように、「変化」しながら前に進む九州ゆかりの人たちに話を聞きました。
《液体に細長いセンサーを浸すと、1分程度で波形が表示された》
センサーに電圧をかけると、その表面から電子が放出され、液体の分子が酸化・還元されます。電圧-2.5~+2.5ボルト(V)の幅でスキャンするように測定していき、そのデータをスペクトルで表します。液体の「指紋情報」です。
「指紋情報」と、人間が感じる甘さ、香りなどの味覚情報を、事前に機械学習させます。両方のデータを突き合わせれば、例えば酒類なら、製造工程を人の舌に頼らずに進めたり、製品の真贋(しんがん)判定や新製品の開発に生かしたりできます。
《幅広い業種から液体のデータ化を頼まれる》
主なターゲットは、世界市場が大きいワインです。赤ワインのブドウ品種ごとにスペクトルを出し、類似性が一目で分かるグラフも作りました。佐賀市のワインバーがデータと味覚情報集めに協力してくれています。
酒類との相性は良く、焼酎メーカーから「官能評価できる職人が少なくなっている」と官能評価のデータをもらい、相関性の高い測定結果が得られました。大手企業も味の管理はまだ人に頼っており、AIソムリエが職人のサポートツールになると手応えを感じています。九州には焼酎メーカーが400社ほどあるので、今後は酒類組合を中心に連携を深め、データベース構築を進めたいです。
ほかにも、コーヒーやしょうゆ、病気診断のための動物の尿など、幅広い依頼が来ます。
《自作のダイヤモンド膜が鍵を握る》
従来のセンサーは測定電圧の…