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Another Note

アナザーノート 伊藤裕香子・前編集委員

 橋など大型の建設工事だけで使う「シヤチハタのスタンプ」がある。

 ボルトにかぶせてぐっと押すと、ねじ山やナットの表面、角の立体面にまっすぐの線をいっぺんに引く。ボルトの締め付けが弱くないか、最終確認のときに使う。命と安全を守る「印(しるし)」だ。ただ、当日から数日のうちに塗装のために消される、短命の黒衣役だ。

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 「ボルトライン」と呼ばれるこのスタンプの高さは12センチほど。手のひらにおさまる大きさのプラスチック製で、全体で160グラム。ネーム印や記念スタンプのような文具の仲間にも思えてしまう。

「苦渋作業」1日に引く線、1人500本

 聞くと、橋では一つの工事につき1万本から数十万本単位のボルトを締める。1次締めの後、作業員はマーカーペンで1本ずつ、立体面にまっすぐな線を手描きする。再び締め付けた後にナットがしっかり回ったか、ずれを見て最終確認する線で、安全上欠かせない工程だ。

 1日に線を引くボルトは1人500本ほどで、高所作業のこともあり、集中力がいる。手の届きにくい場所や癖によって線がまっすぐになっていないと確認に時間がかかり、作業効率が悪い。

 「スタンプで、なんとかなりませんか」

 開発は、橋梁(きょうりょう…

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