Smiley face

【動画】世界トップクラス、国内唯一の商業金山「菱刈鉱山」の現場=鹿児島県伊佐市

 国際情勢の不安定化や円安によって、国内の金の価格が過去最高の水準に達している。そこで改めて注目されているのが、国内で唯一、商業規模で操業している金山だ。鉱石に含まれる金の割合が世界トップクラスとされる現場では、地道な採掘作業が続いている。

 鹿児島空港から車で約40分。鹿児島県の北端に位置する伊佐市の田園風景を抜けていくと、住友金属鉱山が操業する菱刈鉱山にたどり着く。

写真・図版
掘削の先端部「切羽」では、重機で発破の火薬を仕掛ける穴を開ける。岩盤に見える白い部分に金が含まれている=鹿児島県伊佐市、山本壮一郎撮影

 あたりを見渡しても、田んぼに囲まれた普通の農村にしか見えない。すると、事務課長の青野祥紀さんが教えてくれた。

 「いま立っている真下に、金鉱脈が走っているんですよ」

 青野さんらの案内で坂道を上ると、鉱山の入り口「坑口」が見えた。

 ハイエースに乗り込み、坑口をくぐる。中は真っ暗で、ヘッドライトの明かりが頼りだ。採掘現場「切羽(きりば)」を目指し、4メートル四方の狭いトンネル「斜坑」を時速10キロでじわりじわりと下りていく。

 「この先に、1985年に最初に着脈した場所があります」と青野さん。

写真・図版
国内年次金価格推移と菱刈鉱山の主なできごと

 菱刈鉱山は江戸時代には山田金山の名で知られ、「地元住民らが手掘りしていた」という。商業的な利用が本格化したのが80年代だ。

 住友金属鉱山などが調査を進め、85年に開山。90年代にかけて三つの鉱床を見つけ、東西3キロ、南北1キロの範囲に約170条の鉱脈が延びている。

 縦横に張り巡らされた坑道は、まさに迷路。総延長は120キロにもなるという。

写真・図版
真上から見た「菱刈鉱山」の内部構造

 国内の金山は、すでに軒並み閉山している。世界遺産登録が決まった新潟県の佐渡鉱山は89年に閉山。北海道の鴻之舞鉱山は73年に閉山したほか、同じ鹿児島県にある串木野鉱山は休止中。小規模に金も産出する数カ所の鉱山を除けば、現役の金山は菱刈鉱山だけだ。

 20分ほど車に揺られて切羽に着くと、白い帯状の模様が入った鈍色(にびいろ)の岩壁が現れた。白い模様の周辺に金が含まれるそうだが、肉眼ではわからない。

 金の採掘は、この岩を砕く作…

共有