衆院東京15区（江東区）の補欠選挙が16日告示され、新顔8人と前職1人の9人が立候補を届け出た。江東区長選をめぐる選挙違反事件で自民党議員が辞職したことに伴う選挙で、自民は候補者擁立を見送った。「政治とカネ」の問題で、地元選出の衆院議員が2人連続で逮捕されるという異例の事態のなか、政治への信頼回復を中心に論戦が繰り広げられそうだ。投開票は28日で、15日現在の選挙人名簿登録者数は43万1753人。
立候補したのは届け出順に、NHKから国民を守る党新顔で弁護士の福永活也氏（43）、無所属新顔で作家の乙武洋匡氏（48）=国民民主党・都民ファーストの会推薦=、参政党新顔で看護師の吉川里奈氏（36）、無所属前職で元国交副大臣の秋元司氏（52）、日本維新の会新顔で元グリコ社員の金沢結衣氏（33）=教育無償化を実現する会推薦=、諸派新顔でIT関連会社長の根本良輔氏（29）、立憲民主党新顔で前江東区議の酒井菜摘氏（37）、諸派新顔で麗沢大客員教授の飯山陽氏（48）、無所属新顔で前参院議員の須藤元気氏（46）。
福永氏はこの日、区役所前で「（離婚後に）養育費を受け取れない世帯が多い。養育費の支払いを義務化したい」と演説した。ネット上ですぐに誹謗（ひぼう）中傷される現状に歯止めをかけたいとも訴えた。選挙期間中はエベレスト登頂に向け、ネパールに旅立つといい、今後はSNSを使って支持拡大に取り組むという。
乙武氏は、地域政党の都民ファで特別顧問を務める小池百合子知事が擁立を主導。亀戸駅前での第一声には、小池氏や国民の玉木雄一郎代表らが駆けつけた。乙武氏は「必ずやるのは人に寄り添う政治」とし、障害のある自身の経験を踏まえ、「たとえ恵まれなくても政治がサポートすべきだ」と訴えた。
吉川氏は東陽3丁目の選挙事務所前で第一声に臨んだ。「全国が政治とカネの問題で政治離れしている。江東区から日本を再生する」と支持を呼びかけた。「外国資本に流されない強い国づくり」などに力を入れると強調。参政党にとって初の衆院選といい、代表の神谷宗幣参院議員も駆けつけた。
秋元氏は区役所近くで出陣式を行い、「地元で地に足をつけて活動し、地域の問題を解決してきたのは私一人」とアピール。統合型リゾート事業を巡る汚職事件で実刑判決を受け上告中で、「自民一本でやってきた。公判中で戻るわけにはいかないが、自民の思いも背負って戦わせていただきたい」と力を込めた。
2021年衆院選に続く挑戦となる金沢氏は、門前仲町の富岡八幡宮前で「しがらみのないクリーンな政治。簡単ではないが、実行してきたのが維新」と第一声を上げた。企業や団体献金を受け取らない党の姿勢などを強調。「組織や団体、しがらみまみれの政治をこの江東区から刷新しましょう」と訴えた。
根本氏は東陽町駅前の交差点で第一声に臨んだ。少子高齢化の影響で若者が将来的に受け取る年金が減るとして、「今の日本の年金制度は破綻（はたん）しかかっている。制度改革が必要」と訴えた。政治団体・つばさの党の幹事長として、「政治を放っておいてはいけない。周知するのが我々の役割だ」と呼びかけた。
酒井氏は豊洲駅前で「この街で政治の汚職が広がるのは許せない。今こそかえなければいけない」と第一声。出産子育て環境を改善し、子育て先進国を目指すことなども訴えた。立憲の泉健太代表は「有名人を選ぶ選挙ではない。与党か野党か分からない人が国会で何をするのか」と話した。共産党なども支援する。
飯山氏は富岡八幡宮前で第一声を上げた。擁立した政治団体・日本保守党の百田尚樹代表や、共同代表の河村たかし名古屋市長が応援に駆けつけた。飯山氏は「日本の政治はカネに支配されている。権力も利権もない私が勝ち残ったら、『政治にはカネが必要』という常套（じょうとう）句を覆すことができる」と訴えた。
須藤氏は、東陽町駅近くで「与党も野党も変わらないといけない。完全無所属の私が勝利すれば、行き詰まった政治を変えられる」と第一声を上げた。参院議員としての任期は残っていたが、不祥事が続く江東区の政治を変えるため出馬を決意したという。自転車で街をまわって区民と対話する考えだ。
