漆の木が並ぶ上米内駅の入り口=2025年3月10日午後5時13分、盛岡市、細沢礼輝撮影

 駅員のいない「無人駅」が増え続け、ついに国内全駅の過半数に達した。寂れゆく駅舎に、新たな役割を吹き込めないか。地域ににぎわいを取り戻す拠点として、無人駅を活用する動きが各地で始まっている。

 JR盛岡駅から山田線の各駅停車で15分ほど。上米内駅(盛岡市)は路線の開通と同じ1923年に開業し、木造平屋の駅舎は当時の建物のままだ。かき傷のある漆の木が並ぶ駅舎内には、漆器のほか、漆塗りの筆記用具やアクセサリーが展示販売され、体験工房やカフェもある。

 国産漆の出荷量で岩手県のシェアは約8割。国産漆の不足が指摘されるなか、漆生産を通じた地域振興をめざし、植樹などに取り組む「次世代漆協会」が、漆文化の発信拠点として活用している。

 山田線の利用者数は、JRが発足した87年度には1日平均千人を超えていたが、最近は100人を割り込み、上米内駅は2018年に無人駅となった。JR東日本が公募した無人駅活用プロジェクトに漆協会の提案が採用され、クラウドファンディングなどで募った資金をもとに、20年に駅舎をリニューアルオープンした。

上米内駅舎内には、様々な漆製品が並べられている=2025年3月10日午後5時28分、盛岡市、細沢礼輝撮影

 協会代表理事の細越確太さん(61)によると、近くに桜の名所があるため、花見ついでに立ち寄って漆器に興味を持ってくれる人も多いという。無人駅活用の先駆的な取り組みとして、全国から視察も相次いでいる。細越さんは「駅は地域のランドマーク。地元の人には安心感があり、地域外の人は集まりやすい」と話す。

 国土交通省によると、全国の鉄道の無人駅は01年度は4120駅だったが、22年度には4776駅に増加。全駅に占める割合は43.3%から50.9%に増え、過半数を占めるまでになった。JR各社によると、無人駅は清掃など設備の維持管理が課題という。

記事の後半では、お試し暮らしが可能だったり、グランピング施設として生まれ変わったした無人駅が登場します。

お試し暮らし住宅が整備されたJR三見駅舎=2023年5月23日午後0時42分、山口県萩市三見、大藤道矢撮影

 1991年に無人駅となった…

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