内戦下のシリアを訪れ、路上で市民の取材を始めると、いつしか小銃を携えた政権軍の兵士らに囲まれることがよくあった。市民の表情はみるみるこわばった。
いたるところに設置された軍と治安機関の検問所、どこにいるかわからない密告者。そんな暮らしにみんながおびえ、疲れていた。
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その政権が倒れた5日後の12月13日、晴天の首都ダマスカス中心部には数万人が集まり、解放感に包まれた広場で踊る人たちがいた。「自由だ」「幸せだ」。
記者に答える自らの言葉、今まで見せたことのないような笑顔は、長年の恐怖による統治がいかに重いものだったのかを物語っていた。
政権を倒した反体制派の中核は、米国や国連からテロ組織に指定されており、今後の統治の行方はまだみえてこない。それでも、隣国レバノンとの国境付近には、故郷に帰るシリア難民の長蛇の車列ができていた。
10年以上にわたる内戦の終わりも近いのだろうか。「これからはきっと良くなる」。口々に語った人々の期待が現実になることを祈りたい。