大型地中貫通爆弾バンカーバスター「GBU57」。米空軍提供=AP

 唯一の超大国が、自由貿易秩序に加え、軍事面でも、国際規範から平然と逸脱した。世界は一層、混迷の時代に入る。

 トランプ米政権が国連決議もないまま、イスラエルに同調する形でイラン核施設の攻撃に踏み切った。自由貿易秩序を無視したトランプ関税に続き、国際法を無視した正当性を欠く軍事介入だ。

 米国が理由に挙げるイランの核兵器開発について、国際原子力機関(IAEA)トップは「証拠がない」としている。今回の軍事介入は2003年のイラク戦争をほうふつとさせる。

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 イランの核兵器保有は阻止しなければならない。だが、そもそもイランの核開発を制限する代わりに経済制裁を解除する「イラン核合意」から、欧州各国や日本の懸念をよそに一方的に離脱を発表したのは7年前のトランプ政権だ。その後、イランが核開発に邁進(まいしん)したのは事実で、当時のトランプ氏の判断も問われるべきである。

 イスラエルの核保有を黙認する二重基準も矛盾に満ちている。

 今後は、米国の軍事介入にイランがどう対応するかが焦点となる。イランが軍事行動に出て、エネルギー供給の大動脈であるホルムズ海峡に紛争が波及すれば、エネルギー自給率の低い日本は経済的打撃を受ける。

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 イランが同海峡で機雷を敷設するなどして紛争が本格化すれば、戦後初の自衛隊による防衛出動という事態にも発展しかねない。日本は15年の安保法制で集団的自衛権行使を認め、エネルギー危機など「存立危機事態」と認定すれば、武力行使の一環とみなされうる機雷除去に自衛隊が踏み出す枠組みを整備している。

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