神奈川県秦野市の認定こども園「やまゆりこども園」で園児をたたいたり、逆さづりにしたりする不適切保育があったとする調査報告書を弁護士からなる第三者委員会がまとめ、29日に公表された。保育士による行為を身体的・心理的虐待と認定し、市や県の対応も不十分だったと指摘している。
報告書によると、園の4歳児クラスで2022年2月、園児同士が給食の準備中にたたき合って遊び始め、担任保育士が注意するうちに感情的になり、園児1人の頭を3~4回たたいた。
担任保育士は迎えに来た母親の前でも、泣いて嫌がる園児に「悪いことをしたから怒られた」と何度も念押ししたといい、身体的・心理的虐待とした。
また、同じ保育士が興奮していた別の園児を落ち着かせようと両足を持って逆さづりにした行為なども虐待と認定した。
このほか、給食時間内に食べ終わらなかった園児1人を廊下に出し、いすに給食を載せて食べさせていた行為も「過剰な懲罰といえ、人権を軽視するもの」として不適切保育とした。
市や県の初動にも問題指摘
第三者委は、不適切保育の背景に慢性的な人手不足があったと指摘。園長らによる親族経営で、現場任せの体制だったことも問題視し、再発防止策として「親族運営体制の解体に踏み切ることが望ましい」「研修や保育の振り返りの機会を積極的に持つべきだ」などと提言した。
市や県の初動対応や、被害園児と保護者へのケアにも問題があったとし、「市や県が積極的に介入し、園任せにしないことが強く望まれる」とした。
保育士の人手不足問題をめぐっても、「国の配置基準が実態に即していないことが根本的な問題だ」として、市や県から国に対して「現場の実態を踏まえた保育士配置基準の見直し」を要望するよう強く求めた。