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脱線した土佐くろしお鉄道の車両=2023年6月2日午後0時半ごろ、高知県黒潮町白浜、フリーライター笠原雅俊撮影

 昨年6月、高知県黒潮町で土佐くろしお鉄道の列車が脱線した事故で、国の運輸安全委員会が調査報告書を公表した。運転中止の規制雨量に達していたにもかかわらず、指令員が運転士に運転中止の指示を出していなかったとし、「降雨時の運行の安全確保に対する意識が低く、危険性を理解していなかった」と指摘した。

 事故は昨年6月2日午前9時ごろ、同鉄道中村線の有井川(ありいがわ)―土佐白浜間で発生した。宿毛発窪川行き上り列車(1両編成)が、線路脇の斜面から崩れた土砂に乗り上げ、約50メートル走行して脱線した。乗客はおらず、けが人はいなかった。

 この日、台風などの影響で西日本を中心に非常に激しい雨となり、県内では線状降水帯が発生、同町には大雨警報が発令されていた。現場付近の浮鞭(うきぶち)駅に設置した雨量計は午前8時に運転中止の規制値に到達していた。

 同社では、雨量計が規制値に到達した場合でも速やかに運転規制を行わず、「様子を見てから判断することが常態化」していたとし、「雨量計が運転規制の値に到達したとき、速やかに運転規制を行える体制にすることが必要だ」と勧告した。

 同社の山脇深社長は「調査報告書の内容を重く受け止め、安全管理体制を構築するとともに、全社員が一丸となって安全・安心輸送に取り組む」との談話を発表した。(羽賀和紀)

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