山形県酒田市の「土門拳(どもんけん)記念館」の呼称が、この春、「土門拳写真美術館」に変わった。昭和を代表する写真家の一人だが、そうと知らない世代が増えたからだという。業績を広く伝え、遺産を受け継いでいこうと、新たなファンの開拓に動き出した。
今の酒田市で生まれた土門拳(1909~90)は、演出をせずありのままを捉えるリアリズムの手法を追求。被写体を深く洞察し、肉眼を超える写真に情熱を傾けた姿から「写真の鬼」と呼ばれた。仏像や寺院建築を題材にしたライフワークの「古寺巡礼」をはじめ、写真集「ヒロシマ」「風貌(ふうぼう)」「筑豊のこどもたち」などを残した。
1974年に名誉市民第1号となり、全作品を郷里の市に贈りたいと申し出た。市はそれに応え、83年に土門拳記念館を開館。フィルムなど約13万5千点を収蔵し、企画展を開いてきた。
建物の設計は、昨年末に亡くなった建築家・谷口吉生。華道草月流家元の勅使河原宏が手がけた庭園、イサム・ノグチの彫刻、グラフィックデザイナー亀倉雄策による銘板など、親交の深かった芸術家が空間を彩る。
7月6日まで「スナップショット!」展
ただ、没後35年が経ち、そ…