東京・新大久保で働く在日コリアンたちも、韓国大統領選に関心を寄せている=2025年6月2日、東京都新宿区、富永鈴香撮影

 韓国大統領選が3日、投開票される。在日コリアンによる在外投票率は前回を上回り、母国の行く末に強い関心が寄せられている。背景には、2024年末の非常戒厳で強まった「分断」を憂える思いがありそうだ。

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 韓国大統領選の日本での在外投票は2012年に始まった。在日韓国大使館によると、今回の選挙の在外投票期間は5月20~25日。必要な手続きをした有権者3万8600人のうち、2万7453人が投票し、投票率は71.1%を記録。17年の56・2%や22年の65・3%を上回った。

非常戒厳令、恐怖で体が硬直

 来日して30年近い金相烈(サンヨル)さん(63)は、コリアンタウンで有名な東京・新大久保で不動産業や飲食店などを手がける。大統領選のたびに在外投票をしてきたが、「今回ほどの覚悟で投票したことはない」と言う。

韓国大統領選への思いを語る金相烈さん=2025年5月28日、東京都新宿区、富永鈴香撮影

 昨年12月3日の夜、知人から電話がかかってきた。尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領が非常戒厳を宣布したと聞き、恐怖のあまり、体が硬直した。「また暗い時代になるのか。まさかそんなことが今の時代にありえる?」

 1980年、韓国南西部の光州市で民主化を求めた学生や市民らのデモ隊が戒厳軍に弾圧され、多くが犠牲になった。「光州事件」だ。隣町の羅州市出身の金さんは当時、ソウル市内でデモに参加していた。それだけに「戒厳令」と聞くと、デモ隊に向けられた催涙弾や、光州事件直後に徴兵された軍隊生活がフラッシュバックする。

 「独裁政権の時代から、自分たちの手で民主主義を作り上げたことに誇りを持っていた」。それだけに、昨年末の戒厳令は誇りを傷つけるもので「許せない」。思いを形で表そうと、経営する会社の従業員など周りの人にも投票を呼びかけた。

「アカだ、保守だという二つのかたまりで…」

 大統領選を機に、社会の分断…

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