日本で暮らすブラジル人大学生向けの新たな奨学金制度を、総合商社大手の三井物産(東京)がスタートさせた。ブラジルにルーツがあり日本で育つ子どもたちが学べるよう支援する。将来の選択肢を広げ、国際的に活躍する人材を育成する狙いもある。

 新設した奨学金制度は、給付型で返済は不要。金額は年間100万~120万円。20日に同社で開かれた式典では、受給が決まったブラジル人大学生らが出席し、これまでの経験や、将来への思いを語った。

21歳、日系ブラジル人3世の思いは……

将来の抱負を語る雪原アリネさん=2025年8月20日、東京都千代田区

 「将来は外国ルーツの子どもたちを支えるカウンセラーになりたい」

 愛知県豊田市に住む日系ブラジル人3世の大学1年生、雪原アリネさん(21)はこう話した。ブラジルで生まれ、4歳の時から日本で生活してきた。日本の公立学校に通ったが、環境や文化の違いからうまくなじめず、中学2年生でブラジル人学校に移ることになった。高校卒業後は自動車工場や介護ヘルパーとして働きながら、大学受験に向けた勉強を続けた。大学には無事に合格し、今は心理学や社会福祉を学ぶ。

 「ブラジル人学校に受け入れられたことで、再び日本語の勉強にチャレンジできた」。自身の経験から、今後は同じように悩む子どもたちを精神的に支えたいという。大学院への進学も考えている。

 今回の奨学金制度によって経済的な負担も軽減したとし、「私たちを支えてくれる、信じてくれる企業があることで安心できる」と話した。

 三井物産は、事業展開してきたブラジルへの貢献活動として、2005年から在日ブラジル人への教育支援を開始。09年には高校生までを対象にブラジル人学校に通う子どもたちへの奨学金制度を設けた。昨年、大学生を対象とした制度も創設し、雪原さんら4人が1期生となった。

 この30年余りで、多くの日系ブラジル人が日本に移り住んだ。出入国在留管理庁によると、昨年末時点の在留外国人数は約377万人。このうちブラジル国籍の人は約21万人で、6番目に多い。

外国人を支援するNPO「制度は大きな一歩」

三井物産の「在日ブラジル人大学奨学金プログラム」で奨学生に選ばれた雪原アリネさん(右から2人目)ら=2025年8月20日、東京都千代田区

 外国人支援に取り組むNPO…

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