復旧を祝い、地元の虎舞が披露された旧吉田家主屋=2025年5月23日、岩手県陸前高田市、東野真和撮影

現場へ! バラバラ文化財の再建(1)

 東日本大震災から間もない2011年3月下旬。岩手県立博物館の学芸員だった佐々木勝宏(64)は、ある歴史的建造物の被害状況が気になり、陸前高田市気仙町の今泉地区に入った。

 建物の8割が全半壊し、約260人が犠牲になった気仙町。佐々木の眼前には、津波に破壊された家々の瓦礫(がれき)が方々に集められ、山のように積み重なっている光景が広がっていた。

 佐々木が気にしていた、江戸時代後期の1802年建築の「吉田家」は津波で基礎部分が残るのみで、全壊していた。吉田家は仙台藩から任命され気仙24村を治める地方役人「大肝煎(きもいり)」を代々務め、主屋は執務や軽犯罪の裁判にも使われた。土蔵などを含めた4棟は岩手県の有形文化財。住民は「大庄屋」と呼び、地域の誇りだった。

はっきり区別できた黒く太い材木

 呆然(ぼうぜん)と立ち尽くした佐々木だったが、しばらくして、あちこちの瓦礫に黒く太い材木が交じっているのに気がついた。囲炉裏の火から出たすすがついた、主屋の部材だった。茅(かや)のついた屋根の残骸など、佐々木には他の瓦礫とはっきり区別することができた。

津波で流され、見つかった旧吉田家の屋根部分=2011年5月9日、岩手県陸前高田市、岩手県立博物館提供

 すぐに吉田家の第15代当主…

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