Smiley face

 地震で被災して間もないのに、今度は水害に見舞われる――。昨年9月21日に能登半島を襲った豪雨(奥能登豪雨)は、地震と豪雨が重なる複合災害の課題を改めて突きつけた。

 あれから1年。その後の解析で、地震時の隆起により浸水が深くなった場所があったとみられることもわかってきた。地震で崩れた土砂が、被害を増幅させた可能性も指摘される。

 気候変動で雨が激しさを増すなか、ほかの地域もひとごとではない。どう備えればいいのか。

隆起で流れにくく? 中流は↑下流は↓

 昨年1月1日の能登半島地震では、半島の北岸側が高いところで4メートル以上も隆起した。これは、付近を北に向かって流れる川の河口側が持ち上げられたことを意味する。

 それが豪雨時にどんな影響をもたらしたのか。

 京都大防災研究所の佐山敬洋教授は、石川県輪島市の河原田川と町野川の流域について、隆起がなかったときと、あったときの氾濫(はんらん)の様子をシミュレーションした。

 すると、市の中心部では浸水深が20センチほど下がっていた。一方、市東部の町野町では30~50センチほど深くなった場所がある結果になった。

写真・図版
浸水した石川県輪島市の中心部。奥に見えるのが河原田川で左側が河口。合流点付近の橋のたもとに市役所がある=2024年9月21日午後4時12分、朝日新聞社機から、小林正明撮影

 市中心部は河原田川の河口に近く、1メートルほど隆起している。陸地に対して海面が下がった形になったことが影響したという。水深の低下は、河口から1キロほど上流まで及んでいた。

 対して町野町の場所は、町野川の河口から数キロ上流で、町唯一のスーパーの浸水が報じられたあたり。隆起で河口側が持ち上げられ、川の勾配が1500分の1から1700分の1へと緩やかになったことで、水が滞りやすくなったという。

  • 石川県は今年5月、隆起を考慮して浸水想定を見直した

 隆起での水位上昇は、川の水深8メートルに対して4%ほど。輪島市の24時間降水量は400ミリを超え、1時間に100ミリ以上の雨を記録するなど、それだけで浸水が生じておかしくない状況ではあった。

 ただ、わずかな深さの違いが被害の明暗を分けることもある。

 東日本大震災では広く沿岸が…

共有