地価高騰が続く大阪の繁華街・ミナミ(大阪市中央区)を舞台に、地面師とみられるグループに不動産の買い手側が計14億円超をだまし取られたとされる事件で、一部の購入代金の振込先として、本来の不動産所有会社と同じ名称の法人口座が使われていたことが捜査関係者らへの取材でわかった。両社は無関係の別会社で、大阪府警は容疑者らが準備した「ダミー会社」とみている。
これまでの捜査で、巨額の不正取引の実態が浮かび上がってきた。
昨年3月7日、大阪市内のB社のオフィスの一室。総額10億円超の札束が入ったスーツケースが、A社の代表を名乗る若い男らに渡った。
この数日前、A社がミナミで所有するビル3棟のうち、1棟をB社に、2棟をC社に売却する「契約」が結ばれ、手付金が支払われていた。10億円超は購入代金の残額で、仲介業者や司法書士も立ち会った――。
捜査関係者らによると、詐欺被害に遭ったとされるB・C両社から容疑者側への金の引き渡しは、このように行われたという。
府警は今年5~6月、この不正取引を主導したとして、地面師グループの指示役とみられる会社役員の福田裕(ひろし)容疑者(53)=大阪府東大阪市=を詐欺容疑などで逮捕。「A社代表」を名乗った若い男は住居・職業不詳の粂(くめ)陵平容疑者(24)=電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑などで6月に逮捕=とみて調べている。
A社は1964年設立の同族経営の不動産会社で、本来の代表は70代女性。粂容疑者はB・C両社に対して女性の親族を名乗り、「経営を引き継いだ」と説明していた疑いがもたれている。実際に、A社の登記もミナミの不動産取引前の昨年1月下旬に無断でそのように変更されていた。
関係者によると、登記に粂容疑者の住所として登録された大阪市内のタワーマンション26階の部屋は当時「空室」だったという。
福田容疑者は大阪府警の調べに対し、人気ドラマに登場する「黒幕」について言及しました。どんな意図があったのでしょうか。記事の後半で紹介します。
ただ、この不正な登記変更は…