広島・長崎の被爆者らで組織する日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞が決まった。米国の「核の傘」のもとにある唯一の被爆国が長年訴えてきた核廃絶はどうすれば実現するのか。ジレンマの中での核廃絶や核軍縮の模索を論じてきた国際政治学者の藤原帰一さんに、今回の受賞の意味について寄稿してもらった。

被爆者の坪井直さん(右)と握手し話すオバマ米大統領(中央)。左は安倍首相(肩書はいずれも当時)=2016年5月27日、広島市中区、代表撮影

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞が決まったと聞いて最初に思ったのは、被団協代表委員を務めたひとり、2021年に亡くなられた坪井直(すなお)さんのことだった。

 坪井さんが広島を訪問したオバマ米大統領(当時)と握手した写真をご覧になった人も多いだろう。米国の原爆投下を謝罪もしないオバマに会うとは何だという批判があった。しかし坪井さんはオバマに会い、握手した。

 坪井さんらしいと思った。広島と長崎への原爆投下は膨大な一般市民の殺戮(さつりく)であり、いかに日本政府に日米戦争の開戦責任があるとしても容認する余地はなく、米大統領に謝罪を求めるのも当然だ。しかし、坪井さんには、謝罪よりも大切なことがあった。世界から核兵器を廃絶することだ。

 いつお目にかかっても、坪井…

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