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 国史跡の楯築(たてつき)墳丘墓(岡山県倉敷市矢部)から出土した祭祀(さいし)用土器「特殊器台」の修復費用の一部を、岡山大がクラウドファンディングで募っている。特殊器台は埴輪(はにわ)の起源とされ、岡山大考古学研究室は「貴重な資料で、後世に伝えていくことが重要」と協力を呼びかけている。

 楯築墳丘墓は弥生時代後期(2世紀後半)に造られ、同時代最大級の全長約83メートル。日本における国家成立を語る上で、欠かすことのできない遺跡との位置づけという。円丘部から2方向に突出部がある「双方中円形」と言われる数少ない形状が特徴で、前方後円墳の起源とされる。

 岡山大は1976~89年、計7回の発掘調査を実施。鉄剣やまが玉、ガラス製小玉などのほか、特殊器台といった土器類が出土した。

 器台はつぼをのせ、祭りに使われる。特殊器台は吉備地方で生まれたとされ、その後変化し、古墳時代に埴輪になったと言われている。

 楯築墳丘墓から見つかった修復対象の特殊器台は高さ約120センチ、口縁の直径約50センチ。全体像が分かる貴重なもので、石膏(せっこう)で復元されたものの半世紀近くたって劣化が進み、この10年は博物館などから借用依頼があっても断らざるを得なかったという。

 岡山大は2016年度から、鉄製品といった遺物の保存処理をする修復事業を本格的に開始。多額の費用がかかり、予算確保が難しいため、今回初めてクラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/145204別ウインドウで開きます)に乗り出し、11月5日まで受け付けている。第1目標金額の150万円を超えても、第2目標(280万円)が設定されており、超過分は別の小型特殊器台の修復費に充てられる。

 特殊器台は修復後、学内の施設で展示を再開し、将来的に広く展示したいという。岡山大の清家章教授(日本考古学)は「特殊器台の修復は国の宝を守ることにつながり、研究にも役立つ」と意義を強調している。(北村浩貴)

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