社会保障審議会年金部会の様子=2024年7月30日、東京都千代田区

 公的年金の目減りを防ぐため、厚生労働省は、基礎年金(国民年金)の底上げ策の本格検討に入った。厚生年金の積立金を活用する案が有力。ただ、将来的に兆円単位での国の負担が必要となり、財源確保が課題だ。来年の年金制度改革に向け、年末までに議論をまとめる。

  • 年金は現役世代の負担が重すぎない? 制度を維持するための仕組みは

 7月3日に公表された公的年金の将来見通しによると、労働参加や賃金上昇のペースが鈍ければ(過去30年投影ケース)、給付水準は現在よりも2割ほど減少。特に基礎年金の減少が目立ち、対応が急務だ。現役の手取り収入に対する年金の割合を示す「所得代替率」は、2024年度の36.2%から57年度には25.5%に下落する。

 公的年金には、人口減少や長寿化に応じて給付を抑える「マクロ経済スライド」という仕組みがある。支え手が減る中でも収支を調整する狙いだが、給付減は基礎年金の目減りにもつながる。

 そこで同省は厚生年金の積立金の活用を検討。過去30年投影ケースで57年度まで続く想定の抑制期間を、36年度までに縮めると、所得代替率全体は5.8ポイント増の56.2%に上がる。公的年金は、1階が基礎年金で2階が厚生年金。国民共通の基礎年金の底上げは、ほぼ全ての厚生年金の加入者の年金額も引き上げる。

 だが、巨額の財源確保が課題となる。基礎年金の半額を賄う国の支出が増え、40年度に5千億円、50年度以降には1.8兆~2.6兆円になると見込まれる。政治的影響も大きく、同省も慎重に議論を進める。

 基礎年金の底上げ策として同…

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