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年金関連法案の修正に合意し、文書に署名した後、写真撮影に臨む石破茂首相(中央)、公明党の斉藤鉄夫代表(右)、立憲民主党の野田佳彦代表=2025年5月27日午後4時22分、国会内、岩下毅撮影

 自民、公明、立憲民主の3党が年金法案の修正で合意した。政府案を作る過程で削除された基礎年金底上げ策が、立憲の求めに応じる形で復活し、修正案に盛り込まれることになった。この底上げ策はどういう意味を持つのか。そして、この策を採り入れる場合の課題とは。年金制度に詳しいニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主席研究員に聞いた。

 修正案で復活した基礎年金の底上げ策が実施されれば、将来世代、より具体的には、就職氷河期世代やそれ以降の世代が高齢になったときに受け取れる年金額の水準が、現在の制度を続けた場合よりもあがり、世代間の不公平が縮小します。加えて、現在の制度を続けた場合に発生する、現役時の給与が少ない人ほど年金の目減りが大きくなるという世代内の不公平の問題も解決します。従って私は底上げを肯定的に捉えています。

 ただ、底上げ策に伴う痛みについては、議論や納得が不十分です。

 底上げ策の実施に向けては、大きく3点の痛みがあると考えています。

 しかし、痛みを気にする前に、まず今の年金の仕組みやそれが続くと起こる問題を理解する必要があります。

今の仕組み継続 何が起きるのか

 今の仕組みでは、将来の現役世代や企業の負担を考えて保険料の引き上げを止めた一方で、現在の高齢者が受けとっている年金も含め、今後約100年間を見通した年金財政の収支が均衡するまで、年金額を実質的に目減りさせることになっています。

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 また、年金制度には、20~…

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