埼玉県内の公立小中学校のPTAが加盟する県PTA連合会(県P連)から、市町村単位での退会が相次いでいる。政令指定市として独立しているさいたま市をのぞく県内62市町村のうち、2024年度の加盟はわずか16市町だけになった。県P連は「旧来型のPTAから脱却し、再加入に理解を求めていきたい」と説明している。
PTAはピラミッド構図になっている。全国組織の日本PTA全国協議会(日P)に都道府県や政令指定市のPTA協議会・連合会が加盟。市町村のPTA協議会・連合会は都道府県のPTA協議会・連合会に加盟し、各校のPTAは市町村のPTA協議会・連合会に加盟している。
一般会員の会費も、一部が市町村のPTA組織や県P連、日Pに「上納」されている。近年、このピラミッドから退会する動きが各地で表面化しており、たとえば、さいたま市PTA協議会も6月に日Pから退会した。
県P連でも昨年度中に7市町が退会。県P連の加盟校数は現在174校だ。さいたま市をのぞく県内の小中学校の約16%にすぎない。県P連関係者は「全国的にみても組織率は最低レベル」と話す。
上部組織の会計処理への不信感
今年退会した市町に理由を尋ねると、「共働きが増えてPTA活動に多くの時間を割けない人が増えている。県P連の役員を担う余裕がない」(上尾市PTA連合会)、「年20回以上ある会議出席への負担や日Pの会計処理への不信感」(三郷市PTA連合会)などだった。
日Pは22年度の決算で約4700万円にのぼる赤字を出しており、三郷市P連は昨年、日Pや県P連に質問状を送付したが、明確な回答は得られなかったという。
県P連によると、以前は県内のほぼすべての市町村PTAが加盟していたが、20年ほど前に積立金の使い方などをめぐって意見の相違が起き、所沢市PTA連合会や川越市PTA連合会など西部地域がまとまって退会した。その後、半数程度の市町村で構成していたが、この5年で15市町が抜けるなど、さらに組織率が低下したという。
活動の「見える化」目指す
市町村のPTAだけでなく各校のPTAも単独で上部組織から退会する動きが相次いでいる。今年度から県P連の会長をつとめる石井大晴さんは「会員からすると、上部組織が何をやっているのか見えにくい状況も、退会の背景にあると思う。活動を『見える化』したい」と話す。
たとえば、県P連の役割として、県教育委員会の求めに応じて、教育施策についての意見を伝えている。
石井会長によると、これまでに、家計に余裕がない子どもたちへのサポートとして子ども食堂で無料塾を開催するよう提案したり、子どもたちへの目配りという意味で教員数を増やすよう意見を述べたりしたという。
石井会長は「実際に意見が反映されることは多く、子どもたちのメリットにつながっている。上部組織には上部組織の役割があると考えている」という。
今後は、退会した市町村に出向いて退会理由などをヒアリングし、改善に取り組むという。「会計の透明化や会議・イベント参加の縮減といった改革を進め、将来的には再加入を検討してもらえるよう理解を求めていきたい」と話す。(小林未来)
県P連から近年退会した市町村のPTA組織
2019年度 本庄市、北本市、伊奈町
20年度 志木市、新座市
21年度 戸田市
22年度 久喜市、幸手市
23年度 蕨市、上尾市、八潮市、三郷市、吉川市、杉戸町、松伏町
※最終加盟年度