国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏=関田航撮影

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)トップのフィリッポ・グランディ高等弁務官が19日夕、訪問先のレバノンから、朝日新聞の電話取材に応じた。世界最大の難民受け入れ国の一つであるイランでイスラエルとの交戦が続く情勢に懸念を示し、これ以上世界に難民が増えないよう、「交渉に戻って」と訴えた。主なやりとりは以下の通り。

  • イスラエルとイラン、なぜ交戦状態に?

 ――20日の「世界難民の日」に合わせて、シリアに行くそうですね。昨年12月のアサド政権の崩壊後、多くの国民がシリアに戻っています。

 近隣国から50万人がシリアに帰国し、さらに国内避難民(IDP)150万人が(元の場所に)戻りました。半年で計200万人が戻ったのは、すばらしいことです。

 ただ、問題は彼らが戻っても、残っているものがほとんどないことです。UNHCRなどは旅費や最初の数カ月間の生活費を提供していますが、相当限定的なものです。医療や教育、より良いインフラなどが必要とされています。あまりにも多くのものが破壊されてしまいました。

 最も重要な二つのことは、「安全」と「仕事」です。なぜ、それらがないのに帰ろうとするのかと聞くかもしれませんが、誰しもみな、故郷に戻りたいものです。より多くの人道支援だけではなく、制裁が解除され、再建が加速することが求められています。

イランは最大の難民受け入れ国の一つ、何が起きるのか

 ――世界が中東情勢を注視しています。あなたはキャリアの大半を中東で過ごしてきた専門家です。イスラエルとの交戦が続くイランは難民350万人を受け入れている世界最大の受け入れ国の一つですが、いまの状況の帰結として、何が起こりうるのでしょうか。

 今日の世界において、戦争は…

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