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鈴木亘さん

 知識人層が聴き取れる音でなければ、「声」として認識されない――。そんな知性や感性の不平等な枠組みを批判する、フランスの哲学者ランシエール。その思想を、美学者の鈴木亘さんが、民主主義に引きつけて読み解きます。

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 フランスの哲学者、ジャック・ランシエール(1940~)の研究をしています。美学や芸術のほか、民主主義など政治についても論じている思想家です。

 ランシエールの考え方の基本には、人間の能力は平等だと考える意識があります。まずは、すべての人が知性や感性において平等だと宣言するところから議論を始めます。例えば、名もなき労働者による「家から庭を眺める」経験を、詩人や哲学者のそれと並べて「同じ美的経験ではないか」と示すのです。労働者も詩人も、美的・知的能力において平等ではないか、と。

 なぜ、平等を強調するのか…

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