気鋭の振付家、橋本ロマンスが7月3~7日、東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで新作「饗宴(きょうえん)/SYMPOSION」を上演する。ソクラテスら、古代ギリシャの賢人たちが「『愛』とは何か」について演説するプラトンの書から想を得たが、共感ではなく、「特権階級の男性たちの価値観で語られる『愛』に対する強い違和感」が出発点になったという。
私ならいま、愛について誰に語らせるだろうか。心に浮かんだミュージシャンやダンサーたちに会い、対話を重ね、ストーリーラインを紡いだ。「SNSなどの標的にされず、誰もが自分の心に正直に語れる場所が今、いかに少ないか」と愕然(がくぜん)とした。
故古橋悌二が、自らのセクシュアリティーを礎に性や人種などに基づく差別の深層に切り込んだダムタイプの作品「S/N」(1994年)を改めて見る機会もあった。AIやジェンダーといった「現代」の諸問題が、実は30年以上前から存在し、解決されぬまま私たちの世代へと先送りされてきただけのものなのだと気付かされた。
95年生まれ。美大で現代美術を学んでいた2019年にダンス創作を始め、翌年には横浜ダンスコレクションで新人振付家部門最優秀新人賞を受賞。「デビルダンス」「Pan」など、ストリートダンス仕込みのキレのある動きで、現代の人々の内面にひそむグロテスクな思考の断面を容赦なく見せてゆく話題作を次々に発表、ダンス界に旋風を巻き起こし続けている。
舞台は、様々な社会的バイアスによって見えない存在とされている「透明な人々」を、見える状態にする場所だと語る。弱き人々の声を、劇場を通じ、世界に響かせたい。「あなた自身が誰かを『透明な存在』にしていないか」と、観客にも当事者意識の有無を問いかける。
「少数派(マイノリティー)…