「知床」が7月17日に世界自然遺産の登録から20年を迎えるのを前に、札幌市の北海道大学キャンパスで6月28日、講演会が開かれた。知床半島で40年以上にわたって撮影を続ける北海道羅臼町在住の水中写真家、関勝則さん(71)が登壇し、知床の海の魅力を紹介した。約160枚の写真を大型スクリーンに投影し、軽妙なトークで会場を沸かせながら、近年の気候変動にともなう海の生き物たちの変化について語った。
関さんは北海道釧路市出身。ダイバーのガイドなどを行う「知床ダイビング企画」(羅臼町)を運営しながら、年間200日以上、知床の海に潜り続けてきた。
講演で、大量のタラバガニが群れ集まって海底に「ピラミッド」のような塊をつくる様子や、卵を抱きながら海中を泳ぐ大型のイカの一種「ササキテカギイカ」など、知床の海に暮らす生物たちの珍しい写真を一挙に公開。岸のすぐ近くまで深海が迫る地形のため、「アバチャン」や「キチジ」、「キュウリエソ」といった深海魚に出会うチャンスも多いことなどを紹介した。
近年目にするようになった海の変化についても、この40年間に撮りためた写真を使って証言した。
関さんは、かつては知床の海岸や川に大量に押し寄せていたカラフトマスが、近年は激減してしまったことや、海藻の種類によっては分布が北上しつつあることなど、地球温暖化が知床の海に大きな影響を与えつつある現状について解説。「僕が通い始めた40年前の海とは、今は全く違う」と語った。
知床半島に押し寄せる流氷は、昔に比べて厚みが減少。15~16年前には普通にみられたサンマの大群も、羅臼町沿岸では近年、見ることができないという。
今回の講演は、世界遺産登録20年の節目に向けて、北海道大学大学院経済学研究院が主催した。公演時間は約1時間半にわたり、北海道内だけでなく、首都圏や近畿地方からも聴衆が集まった。
同研究院の平本健太教授(61)は「すばらしい写真の数々を見ながら、いま我々が直面している気候変動などの問題について考えるきっかけをいただくことができた」と語った。