全日本吹奏楽コンクールへ向けて練習をする近畿大付属高校の吹奏楽部=2024年9月30日、東大阪市若江西新町、大蔦幸撮影

 ん? 微妙だけど、音程がずれている。

 近畿大付属高校(大阪)の会議室で、吹奏楽部の山村悠時(ゆうと)さん(3年)は指揮の手を止めた。

 もう一度、最初から。

 やっぱり合わない。

 「ちょっと意見交換してみて」と促すと、部員たちは次々に言葉を交わし始めた。「音が飛んでない。音程も悪い?」「的を広めにするのがいいかも」

 そんな積み重ねで、20日に立つ全日本吹奏楽コンクールの舞台に向けて、音楽の完成度を高めている。

 40分ほどが過ぎたころ、慌ただしくドアを開け、部を指導する小谷康夫さん(63)が駆け込んできた。

 「あぁ~、やっと来られた」。プロのティンパニ奏者として活動する小谷さんの指導は、1週間ぶりだ。

 指揮棒を構え、「『宇宙』から行こか」と告げると、部員たちは「待ってました」という表情。しばしの静かなメロディーの後、一気に息の合った音をはじけさせた。

 曲は「宇宙の音楽」。11年前、先輩たちが全国大会の自由曲で演奏したのと同じ曲だ。

 部は、その翌年の2014年からずっと、関西大会で金賞を受賞しながらも全国大会に進む代表3校には入れなかった。

 何が足りないのか。どうしたらいいのか。20年余り指導を続ける小谷さんも答えを見つけられずにいた。

「学生指揮」リスクと成果

 打開のきっかけの一つは一昨年の冬、部員らの声から生まれた。

 「学生指揮を採り入れたい」…

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