和歌山の県立近代美術館が4月下旬、4カ月ぶりに改めて開館した。
館内のエレベーターを新しく交換する工事のために休館していたが、交換されたはずのエレベーターは一見、新旧の違いがわからない。どんな工事だったのだろうか。
「近代は機械の時代」
昨年8月のこと。試作された新しいエレベーターの押しボタンの電球について、学芸課長の井上芳子さんはこうこぼしていた。
「色が違う……」
もとの色と同じにならなくて悩んでいるということだった。記者は不思議に思った。美術展の企画を主な仕事とする学芸員がなぜ、工事のことで頭を抱えているのだろう。
取材を進めるうちに、わかってきた。
近代美術館は1994年に現在の場所に新築移転され、エレベーターもそのときに造られた。全体が日本を代表する建築家・故黒川紀章氏の設計だ。
吹き抜けのロビーにガラス張りの塔のように造られたエレベーターには、黒川氏のこだわりがあった。
「近代は機械の時代だった」…