【社説PLUS】社説を読む、社説がわかる
新聞の「社説」というと、その時々の政治や経済、国際関係といった、硬派のテーマばかりという印象をお持ちの方が多いかもしれません。
ですが、時には、ニュースの喧騒(けんそう)を離れた、やわらかい筆致の社説もあります。
今回、改めてお届けする「夏休みの読書」は、主に小中学校の児童・生徒の皆さんを念頭に置きながら、「紙の本」を手にする楽しさ、大切さを、大人の皆さんとも共有したいと考えたものです。
連載「社説PLUS」
毎日のテーマに何を選び、どう主張し、誰にあてて訴えるのか。論説委員室では平日は毎日、およそ30人で議論し、総意として社説を仕上げています。記事の後半で、この社説ができるまでの議論の過程などをお届けします。
【7月30日(木)社説】
夏休み、やりたいことがたくさんある。ゲーム、スポーツ、旅行……、涼しいところで楽しめる読書はいかが?
本との出会いは、昔の人や外国の人、自分と違う立場の人を知る機会となる。家や図書館にいながら、何百年の時間、何千キロの道のりを駆け巡る「旅」となる。新しいことを知り、考えることで、世界が広がっていく。
ふだん、あまり読まない人は、手を出しにくいかも知れない。でも、気楽に考えよう。途中から読んでもいいし、つまらなければ読み飛ばしても、気になるところだけみてもいい。読み切らなくても構わない。電子書籍もいいけれど、図書館や書店で本棚を眺め、紙の本を手にとり、まず感触を確かめてほしい。
どの本を選ぶか。乗り物でも音楽でも好きなことの本、学校や図書館がすすめる本。そして好きな人が読んだ本もいい。同じ本を読むことで、もっと知るきっかけになる。
「図書館に行って、失敗してみよう」
図書館や読書に詳しい京都ノートルダム女子大学の岩崎れい教授は「図書館に行って、どんどん失敗してみよう」と話す。選んだ本がつまらなければ、今の自分には合っていなかっただけのこと。別の本を探せばいい。繰り返すうちに上手に選べるようになってくる。
わからないことは図書館の人に聞いてみよう。きっと、あなたに話しかけられるのを待っている。題名がわからなくても、あいまいな希望でも、本のプロが面白いものを探すのを手伝ってくれる。
日ごろ知りたいことをネットで検索している人も、本で調べてみてはどうだろう。すぐに答えは出ないけれど、ネットには出てこない答えも見つかるだろう。その寄り道や、調べ方を考えることで、思わぬ発見もある。
読書は何の役に立つのだろう。知識が増え、国語の勉強にもなる。岩崎教授は「しっかりとした自分の考え方の土台をつくること、人生の選択肢を広げること」の二つをあげる。例えば、本の主人公の生き方について自分なりに考えて、しっかりした価値観をつくれば、いじめや受験失敗のような困難を前にしたとき、立ち向かうか、逃げるか、別の解決法か、まわりに左右されずに考えて乗り越えることにつながる。本からいろんな仕事や生き方を知って目標を探せるだけでなく、考えて学ぶ力がつき、選べる道も広がるはずだ。
たまたま本棚で目にした一冊が一生の宝になるかも知れない。何歳でも遅くない。
この夏、そんな出会いがありますように。
この社説ができるまで 論説副主幹・小沢秀行
ここのところ、毎年7月の中下旬に、主に夏休みに入った小中学生の皆さんに向けた社説を掲載してきました。
2022年 夏の自由研究 楽しんで挑戦しよう
2023年 夏休みの挑戦 リアル体験を楽しもう
2024年 猛暑の夏休み 博物館のぞいてみたら
実はいずれも提案者は同じ。主に科学分野を担当している論説委員です。今年は何かなと思っていたら、「読書」で来ました。
まず議論になったのが、電子…