先週に続き夏枯れ。ネタを求めて「EUフィルムデーズ2025」に通いました。欧州連合の在日大使館や文化機関が選んだ近作を上映する映画祭で、今年はアニメーション特集。今回初めて見る長編の中でアタリはハンガリーの「名画泥棒ルーベン・ブラント」(2018年)でした。飛翔(ひしょう)と落下を軽やかに繰り返す冒頭の軽業的3次元アクションが素晴らしい。これぞアニメーションのよろこび。一方でポーランドの「農民」(2023年)は細緻(さいち)な映像なのによろこびがゼロ。アニメとはなんじゃ?と考えさせられました。
主人公ルーベン・ブラントは強迫性障害の犯罪者を専門とする特殊な精神科医で、治療にアートを使うのですが、自身は名画の登場人物に襲われる悪夢に悩まされています。名画を所有すれば悪夢の発作は起こらない、と知った怪盗ミミ率いる4人の患者仲間は世界各地の有名美術館からマネの「オランピア」やボッティチェリの「ビーナスの誕生」などを華麗な手口で盗みだし、若き探偵マイク・コワルスキーがそれを追う、という物語。
ブラントの治療を受ける前のミミがルーブル美術館でクレオパトラの扇を盗み、マイクが追うというのが冒頭のアクション。まずはパリの市街を猛スピードで駆け抜けるカーチェイス。メリハリがいいです。街灯に正面からぶつかりオープンカーから放り出されたミミは、そのままぴゅーんと飛んでいって宙返り、どこかのビルの排気口(?)にスポッと滑り込み、しゅーんと落下してクラブのステージにポーズを決めて着地! 橋の上からジャンプして船に飛び降り、空中ブランコよろしくロープからロープへ――。
ジャンプの間の浮遊感、狭い空間を落下していくスリル、着地のタイミングの気持ちよさ、都市空間を自在に使うアイデア、緩急つけた場面転換の鮮やかさ。泥棒が出てくるところが同じ長編アニメ「パリ猫ディノの夜」(2010年、仏などの合作)を思い出しました。シャレた味わいも共通します。やるなハンガリー。
名画がモチーフなので、現実…