日本の外交安保政策の司令塔である国家安全保障局(NSS)。そのトップが今年1月、3年半ぶりに交代し、外務次官などを歴任した岡野正敬氏(60)が4代目局長に就いた。外務省内随一と言われるほど国際法に精通し、「法の支配」を重視する岡野氏。直面するのは、各国への高関税など既存の国際秩序を根底から揺るがすトランプ米政権への対応だ。
「ウォルツ・ショック」
今月2日、政権幹部らに衝撃が走った。トランプ米大統領がウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官(NSA=National Security Advisor)を解任し、国連大使に指名する人事を発表。アプリ「シグナル」の情報管理に絡む不祥事を受けた事実上の更迭とみられる。
NSAは、米大統領の最側近としてホワイトハウスで外交・安全保障政策を取り仕切る要職。その日本側のカウンターパートがNSS局長だ。歴代局長とNSAは、前任の秋葉剛男氏とバイデン米政権下のサリバン氏のように緊密な信頼関係を築いてきた。
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複数のNSS関係者によると、岡野氏も就任前から少なくとも3回訪米し、ウォルツ氏との関係構築に努めた。2月の日米首脳会談では水面下でウォルツ氏と共同声明の内容を調整し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の文言を盛り込むことに成功。トランプ関税でも意見を交わし、岡野氏はウォルツ氏について「トランプ政権の側近たちの中でも話ができる人物。交渉相手として安心できる」と官邸幹部に話すなど、関係の深まりに自信を見せていた。
その矢先の解任劇。岡野・ウォルツのラインが消えることに政権のショックは大きい。トランプ氏は次期NSAに「MAGA」派で苛烈(かれつ)な移民政策を推し進めるスティーブン・ミラー大統領次席補佐官を候補の一人に挙げており、官邸関係者は頭を抱える。
■4代目は「外務省のエース」…